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夢主 名前なし、設定的には画家を目指してます。
相手 スタン。
あのね、ついこの間、tod2クリアしたんですよ、それからスタンが舞い降りたって感じです。
夢主視点
「お兄ちゃん、もう朝よ!おきて!」
早朝というにはすでに遅いだろうという時間帯、早起きの人たちにとっては一仕事を終えた頃に、何やら金属を思いっきり叩いた様な音が村中に響き渡った。寝ボスけな兄に妹が痺れを切らして鳴らしているそれは、大体の村の人たちが朝食の合図にするほど習慣づけられていた。
そしてそれが私の目覚まし時計だった。
今日もその音が鳴り響いた時に私は布団から抜け出して顔を洗いに流し台にへと向かった。髪を整えて服を着替えて外に出ると羊飼いのスタンがウトウトしながら羊を撫でていた。
「スタン。また寝てるの?」
「ん?・・・ああ君か・・・フぁあああ・・・」
まだまだ眠そうにスタンは目をこすった。スタンはこの村の青年で今年で19になると言っていた。
親は居なくお爺さんと妹との3人で暮らしているらしい。
「今日はどこまで行くの?」
「上の方も行ってみたいなって・・・でも今日も寝ちゃうと思うから意味無いかもな。」
「スタンらしいや。」
そうやって笑えばスタンもそれに次いで笑ってくれた。太陽な笑顔に私は少し照れくさくなった。だけど当の本人は無自覚で羊を撫でて喜んでいる。
草を通る風は冷たく、それに反して太陽は暖かかった。
調和のとれた気候と心地よい草の匂いで私もつい寝てしまうのではないかと思ってしまうほどにココは居心地が良かった。
それがスタンがココに居るからだということも何となくわかっていた。
「絵の方は進んだのか?展覧会に出すんだろ?」
「・・・うん。」
その問いに私は少し揺らいだ。展覧会に出す予定の絵が未だに仕上がっていないからだ。
絵自体はもう出来上がるところまで出来ているのに、何となく納得いかない。
「出来てないのか?」
「後少しだよ。流石に一朝一夕で出来るものでもないしね。」
「そうだよな、頑張ってくれ!俺応援してるから。」
そう言うスタンの顔には悪意は見られなかった。
素直に私を元気づけてくれているとは思っていても、まるで馬鹿にしているのではないかと思うほどに私は疲れていた。
こんな気持ちじゃ、今酷い顔をしているのだろうなと私は持ってきていたスケッチブックを開いた。
「スタンをさ、描いてもいい?」
「え?俺!?でも・・・え・・・俺なんかで良いの?」
「・・・スタンを描きたいな。」
少し戸惑ったように周りを見回した後、息を落ち着かせようと深呼吸を始めた。
そんなに緊張しなくてもいいよと言っても言葉は届いていないようだった。
スタンがある程度落ち着いた様なので会話を交えながら絵を描くことにした。
「スタンはさ、なんでダリルシェイドに行きたいの?」
「前にも話したと思うけど、俺じいちゃんが昔してたみたいに仕官や兵士として仕事がしたいんだ。」
「そんな小さなことで首都に行くの・・・?」
「小さくなんてないさ、それに俺の目標なんだじいちゃんを超えて良い兵士になって見せるさ。」
「スタンには欲って物が無いんだね。」
「どういう意味?」
「褒め言葉。」
「そう?」
「スタンにはずっと笑ってほしいよ。」
私の書き方はいつも同じ所から始まる。
目から描き始めるのだ。その方が私は描きやすいのでいつもそうしている。
目を描いて次に眉毛を簡単に書いて輪郭を描きそのあと髪を描いて鼻と口を描いていく。
そして簡単にしか書いていなかった眉毛をきちんと仕上げて下書きは終わりだ。
「出来たよ。」
「見せて。へえ~やっぱり上手いな!展覧会絶対俺行くから!」
「・・・うん。」
正直来てほしくないな。と私は思った。
私の絵なんて有名な画家の光に押し殺されて隅の方に飾っているだけなのだから。
それならいっそ飾らないでくれた方が気が楽だった。その場しのぎの言葉やお世辞は聞きたくなかった。
それから私は太陽が沈むまでスタンと色々話しあった。
それは自分たちの将来のことや、近所のマギーおばさんの昔の噂だとか、他愛のない時間が流れていった。
「お兄ちゃ~ん、もう晩御飯の時間よ?・・・あれ?」
目の前で静かに寝息を立てているのはいつも寝坊ばかりしているスタンではなく、意外にも画家志望の彼女だった。
スタンがリリスの存在に気が付いて口に人差指を当ててし~と音をたてた。リリスは寝ている顔を覗き込みながらスタンに尋ねた。
「寝てるの?」
「ああ、疲れてるみたいだったから。俺、ちょっと家まで運んでいくよ。晩御飯は先に食べてていいから。」
「え、あうん。」
スタンが起こさない様に彼女をおんぶした。
リリスは兄のそんな姿を誇りに思いながらもどこか寂しげに家に戻ろうと脚を家の方向に向けた。
「・・・あれ・・・私寝てた?」
「起きた?もうすぐだからもう少し寝ててもいいよ。」
「・・・ん。・・・ありがとう。」
私はおんぶされている恥ずかしさより、スタンの優しさの方が嬉しくてスタンの首に腕を軽く巻き付けた。
それにスタンは嫌そうな声も感情も出さずに、お世辞にも上手いとは言えない歌を歌ってくれた。
「ねんねころりよ~」
多分、子守唄のつもりだろうが、テンポも音程も無茶苦茶でこれで眠れるのは何も知らない子供だけではないだろうかと失礼ながらそう思ってしまった。
スタンの背中からはほんのり汗の匂いと太陽の匂いがした。
スタンがこの歌を止めたら私が何か話そうと、話のネタを探していたが結局これというネタもなく、スタンの子守唄が止まることもなく家に着いてしまった。
一人暮らしの家のドアを開けると明け方まで書き続きていた油絵具の匂いが鼻にまとわりついた。
スタンが匂いに驚いて、私が油絵具の匂いだと教えると絵を見たいと言うので部屋の中に入れた。
もう少し奇麗に片付けておけばよかったと反省の中部屋の奥に乾かしている絵を見せるとスタンの表情が一変してそのまま立ち尽くして動かなかった。
そんなに酷い絵だったのだろうか、それとも落胆してしまったのだろうか。
私がネガティブな考えをしている中スタンは私の方を向いて肩を掴んだ。
「すごいな!なんか俺、絵ってよく分かんないと思ってたんだけどさ、何かこうグわアって言うか・・・なんか分からないけどすごいよ!」
「・・・これはね、嫉妬と恋心とそして男性をイメージして描いているの。」
指で一つ一つ説明していくとスタンが不思議そうに首をかしげた。
「なんで男性だけ描いてないの?」
「・・それは、まだイメージがはっきりしてないから、・・・最初は描く人決まってたんだけどもう描けないから。」
私はその人を思い出して少しの間感傷に浸っていた。
スタンはそれを見てか沈んだ声で尋ねた。
「・・・それって恋人?」
「お父さん。」
即答した私にスタンは変な事を聞いてしまったと後悔の声をもらした。
「・・・多分完成しないんだろうな。」
「なんで?」
今度は素直に聞いてきたスタンに私は苦笑した。
「きっとココにくる男性はそんな簡単に出会えないよ。」
「・・・でもさ。こんないい絵なのにさ・・・。」
「ありがとう、今からでも新しい絵を描こうかな。スタン協力してくれる?」
「え・・・?」
「スタンを描きたい。」
その問いにスタンは嬉しそうに頷いた。
きっとスタンの見た絵は完成することは無いのだろう。
私の最高傑作はあの絵意外にはあり得ないけども、だけどそれ以上に私は幸せを知った。
毎日、何時間彼を見続けていただろうか、何時間寝ることが好きな彼が私の為に起きてくれていただろうか。
傍から見れば恋人同士に見られるぐらいに私達は仲良くなっていった。
だけど私には何となく分かっていた。彼は私対して恋愛感情なんて抱いていないのだろう。
だけどそれでも私はスタンの事が好きだった。
この気持ちを伝えることは無かったけれど、私はスタンのことが一途に好きだった。
それからしばらくしてスタンは村を出ていってしまった。村中が騒ぎになる中私はスタンの絵を完成させようと必死になっていた。
絵が完成してもスタンは帰って来なかった。そしてその一ヶ月後展覧会が開かれることになった。
展覧会には必ず戻ってくれると思いながらノイシュタットの隅にある小さな会館をのまた隅に私の絵を飾らしてもらった。
だが、スタンは中々帰って来なかった。
「あと3日で展覧会終わっちゃうよ・・・。私の絵売れたのにな。」
「お~い!展覧会もう終わっちゃった?」
その声はスタンの物だった、村を出る前とは少し伸びた髪と見たこともない人たちに囲まれたスタンはどことなく頼もしく見えた。
「私はフィリア・フィリスと申します。」
「あたしはルーティよ。こっちのぶすっとしてるのがリオンね。」
「大きなお世話だ。それよりスタン、僕たちはゆっくり街を観光している暇なぞ無いんだぞ!分かっているのか?」
「分かってるよ。ねえまだ展覧会開いてる?」
「・・・今日はまだやってるよ。良かったら案内しようか?」
「うん。頼むよ。」
私の後ろについて歩く人たちは実に個性的なメンツだった。髪色もそうだし雰囲気が一人一人輝いていた。
展覧会場に着くと有名どころから無名まで揃ったジャンルもばらばらの絵がちぐはぐに飾っていた。
「あの絵完成したの?」
「うん・・・。完成したよ。」
私のスペースに着いたとき、スタンは息を飲んだ。
スタンをモデルとした絵の横にスタンが見て感動していた絵の男性のモチーフが自分になっていたからだ。
「・・・これって俺?」
「うん。良く似てるでしょう?」
「でも、おじさんの絵だったんじゃ・・・。」
「・・・生きている方を優先するのは当たり前でしょう?私は好きな人しか描かないから。」
「え・・・。」
私はスタンの背中を軽くたたいた。
そして大きく笑った。スタンも次いで笑ってくれた、私よりも奇麗で大きな笑顔は太陽の様だった。