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人間が嫌いな未成年。 たまに2次創作3次創作を打ちます。 完全オリジナルも打つ時もあります。 このブログを見た貴方と縁があること祈って・・・。
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明るい道と暗い道があるなら明るい方に行くに決まっている

その方が安全だし、その方が楽しいに決まっている

だけど、君はなんで泣いているのだろう

何故僕が何と言っても泣いているのだろう

涙を嫌っていた君は何故涙を流しているのだろう
 



小さな君はいつも大きな荷物を持って僕に話しかけた。

「おはよう。」

そう言うだけで、何も言わずにどこかへ消えてしまうけれど。
僕はいつも黙ってそれを見ていた。

毎朝、毎晩僕に挨拶だけをしていつの間にか消えていった。
それが僕らには当然だったし、それ以上は特には求めなかった。

僕はいつも公園の片隅で君を待っていた。
毎朝8時に君は僕に挨拶して消えていった。

それを追いかけようと思ったことも有ったけど、それが無駄になることも無謀だと言うことも何となく分かっていた。
僕は毎日通る君を待ち続けることにした。

一年、二年立つたびに君は小さな君では無く大きくなってきた。
僕らの関係は6年続いた頃にひびが入る様になった。

君は色んな友達を連れてきては僕を通り過ぎる様になった。
僕はただ黙ってそれを見ているだけだった。

そんな日々が続いて僕は引っ越すことになった。
君から離れるのは悲しかったけど後悔は無かった。


「君は何故泣いているの?」

そう言うのは公園の片隅に置いてあった銅像だった。
でも、姿は銅像ではなくどこにでもいる様な、少女だった。

自分でその子が銅像だと思ってたのかは分からなかったが、思えば落書きだらけだったからかもしれない。
短いスカートに丸みを帯びた胸は13~14歳ぐらいだろうか。

髪はセミロング程で所々緑やピンクに汚れていた。

自分の姿はピシッと決めた正装で、一目で分かる程中年の社会人だった。
公園のベンチで座っている姿はみすぼらしい程にかすんでいた。

「僕のことは覚えてる?」
「・・・ほっておいてくれないか・・。」
「僕はねぇ、君のことずっと前から知ってるよ。」

そうやって笑う彼女は可愛らしかった。
娘とそれ程年も変わらない姿に自分はなんて醜いんだろうと思った。

正装をして、髪の毛を整えて。
女性社員の為に小奇麗にしようと思って買ったコロンも評判が悪くて捨ててしまった。

少しため息を漏らして、彼女を見た。
所々汚れてはいるものの、自分よりはるかにきれいに見えた。

「・・・君はどうなんだ?何故こんなところに居るんだ・・・?」
「僕は、動けないから。」

そう笑った後、彼女は銅像に姿を変えて元の場所に戻ってしまった。
気味が悪い、そう思った。
キツネだとか、狸だとかが化けて出ていたのだろうか。
そんなおとぎ話に身をゆだねたくなる程に疲れているのかもしれない。

帰ろう、そう思って立ち上がった。

空は蒼いし、雲は白い。
それでも風はまだ春の訪れを教えてくれそうに無かった。

家の前に着いてチャイムを鳴らしても誰も出てこなかった。
鍵を差し込んで、扉を開けると男の靴が当然の様に並べてあった。
吐き崩した靴だった、若い男なら娘の友達なのだろうと、少し離した所に靴を脱いだ。

中に入ると、暖房が入っていて暖かかった。
電気も付けてあって、妻が楽しそうに昼食の準備をしていた。

少し罪悪感に飲まれそうになったが、それ以上に気が楽になっていった。
リビングを開けて、「ただいま」とそう帰ったことを告げようとドアノブを握った時だった。

何かが、自分の中で否定した。

妻の声が聞こえてきた、愛しそうに猫撫で声で誰かと会話していた。

「トシ君、はい。ア―ン❤」

それは普通娘の彼氏や友達と共にする様な会話では無かった。
少し考えて扉を開けると、妻は目を丸くさせた後、一言こう言った。

「誰?」

男はそれに反応して、俺を異端者だと判断したらしい。

「オッサン、何だよお前。警察呼ぶぞ!」

よく見れば、まだ成人したての青年だった。
そこでようやく俺は裏切られたのだと理解した。

妻を盗られるのも、家庭が崩壊するのも昔に既に終わっていたのだろう。

じっと見ていた妻の目から目をそらした。
今はココには居られないと感じて、家を出た。

男はギャンギャン吠えて居たが、それ以上に冷静な自分が不思議で溜まらなかった。

帰る場所の無くした俺は、酒屋に入って適当に酒とつまみを買って街を練り歩いた。

そして、行きついた場所は彼女の元々居た公園だった。

「こんばんわ」

銅像に話しかけても返事は帰って来なかった。

「こんばんわ。」

だが、返事は後ろから帰って来た。
自分と年の変わらないきれいな人だった。

「あ、すいません。覚えていらっしゃいますか?挨拶を交わしていた者です。」
「・・・ココで・・・ですよね。」
「銅像が置かれていたんですけおど、・・やっぱり習慣って離れないですね。」
「今は違うところに置いてあるみたいですよ・・・。」
「・・・本当ですか?」
「はい・・・よろしかったら一緒に見に行きません・・・か?」
「はい。」


おわり

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