人間が嫌いな未成年。
たまに2次創作3次創作を打ちます。
完全オリジナルも打つ時もあります。
このブログを見た貴方と縁があること祈って・・・。
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何も見えなくなった哀れな人魚がいた。
見えないことで妻や子供にも見放され、音や潮から自分の居る場所を把握するようになった。
ああ。
色も光も見えない哀れな人魚の名をフランシスと言った。
戦火の中では先陣を切る美しさから別名戦場の薔薇と絶賛された。
だが。
視力を奪われた途端ゴミ扱いされた、哀れな人魚。
人魚姫 本編 復讐に駆られる堕天使
海の楽園の一角にある小さな家に人魚は住んでいた。
いや、正しく言えば居候していた。
菊は人魚に生まれながらも泳げない故に親に見捨てられ。
5歳にも満たないころに海底奥深くに捨てられた。
それを救ったのが目の見えなくなった人魚フランシスであった。
彼は人情厚い人物で人の痛みを見抜くのが上手い人物であった、昔最愛の人を亡くしてから特に敏感になったと本人は苦笑していた。
多分テーブルの椅子の前に丁寧に置かれている写真がそれを表しているのだろう。
フランシスが見えない目で次々と食事を並べていく、菊はそれをお互いの位置にもっていく。
「菊ちゃんは女の子なんだからもっと食べなくちゃね?」
「はい。いつもありがとうございます。」
そう笑顔で答えればフランシスは微かに笑みを浮かべる。
フランシスと暮らし始めて約1年気付いたことが有る。
それは、誰も訪ねてこないのだ。
確かに周りに民家は少ないが、フランシスには手紙はもちろん誰も近所付き合いをしようとするものは居ない。
時々魚が迷い込む程で静かな日々だった。
誰も来ず、強いては誰も寄らず。
何処か寂しげな顔でフランシスはいつも何処かに食料を調達しにフラフラ出ていってしまう。
「どこに行くのでしょう・・・。」
さみしく思わないことが無いと言えばうそになるが、だからと言って住まわせていてもらって文句は言えない。
人魚が一人増える事は今までの生活をすべて変えてしまうほどの大事の筈なのだから・・・。
「ねえ。誰かいないの~?」
その言葉に菊は大きく肩を震わせた。
だが、逃げるすべもなく相手は勝手に入ってきてしまったようだ。
足音が近づいてきた。
勝手に不法侵入したことに全く悪びれる様子もなく、綺麗に整えられた髪を撫でながら菊に微笑みかけた。
明るいブラウンの目に少し違和感を覚えるも、彼は美しく女性かと疑いたくなるほどに、唇は柔らかで頬はピンクに染まっていた。
白い菊の頬に軽く手を添えて唇を押しつけた。
それに軽く反応する菊を面白そうに見ながら、周りを詮索し始めた。
「兄ちゃんは居ないの?」
「フランシスさんの事ですか?」
「うん、そうそうあの哀れな人魚の事。」
彼の言葉に菊は耳を疑った。
フランシスが目が見えないことを言っているのだろうか?
それとも・・・他に何か有るのだろうか?
「ん?菊には言ってなかったの?」
「・・・はい。」
彼がゴミ箱のふたを開けながらフーンとつまらなさそうに呟いた。
菊はそれを目で追うが、彼は泳ぐのが早いので菊は彼を見るのに必死になって自分の名前を名乗って居なかったことに気がついた。
「あ・・・私の名前何で知ってるんですか?」
「ん~?ここにもいないか~・・・」
台所にある三角コーナーの蓋を手にしながら、菊の方を向いた。
あれ?
「兄ちゃん俺の言うことならなんでも聞いてくれるんだ。」
あれ?
一瞬のうちに空気が重く菊にのしかかって来た。
声のトーンが一つ落ちるたびに菊は身体を震わせた。
「君は菊ちゃんで、泳げないって教えてくれたんだ。ねえ自愛姫って知ってる?」
フェリシアーノは持っていた蓋を元の場所に置いた後少しずつ菊の方に泳いできた。
一かき・・・二かき・・・。
なんて美しいのだろうか。
目の前にじっと私だけを見るフェリシアーノは笑うこともなく、感情は全くないかのような冷たい目で私を抉ってきた。
まるで生きていることすら否定されているような錯覚が襲う。
“ごめんね。”
ああああああああああああああああああ。
謝るなら連れて行って。連れて帰って。
一人は怖いよ。私を独りにしないでよ・・・。
ねえお母さん。
やめて。
「あ・・・あの・・・。」
「俺、頭悪い子は嫌いなんだ。」
怖い。
怒らないで私良い子でいるから。
お願い ぶ た な い で 。
「菊は俺の言いたいこと分かるよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」
その言葉に嬉しそうにほほ笑むと、ミニトマトを一つ口に含んで家を出ていった。
私は生きていては行けなかった。
泳げない人魚など待っているのは死しかない。
動けない生物に天の救いなど皆無などなのだから。
「あ、兄ちゃん。」
フェリシアーノはいやらしい笑みを浮かべた。
だが、それはフランシスには見えない。
フランシスはフェリシアーノが不機嫌であることだけに気が付いていた。
「・・・・フェリシアーノ・・・?」
確かめるようにその名を呼ぶと狂っていると言わんばかりに唇を押しつけてきた。
唇を舌でこじ開け侵入してくる。それが度を過ぎたものだと感じた瞬間フランシスはフェリシアーノを無理やり突き放した。
フェリシアーノは心外だと言わんばかりに今度は首に腕をからめてフランシスに耳打ちした。
「俺のこと好きでしょ?狂わしい程に愛してくれるでしょう?」
ココで否定すればどうなるんて分かっていた。
フェリシアーノのことだから今度は首に噛み付いて吸血鬼の如く俺のことを笑いながら血を飲み干してしまうのだろう。
「・・・・・ああ。愛しているよフェリシアーノ」
苦笑いしながら答えたそれはフェリシアーノの怒りにふれたらしい。
耳を甘噛みされた。
「もっと名前を呼んでよ。・・・・フランシス上等兵。」
「!!」
体中に電撃が走った様な気分になった。
冷静になれない。手から汗が吹き出し、額に脂汗を感じたときフェリシアーノが笑っているような気がした。
「・・・俺の事憎い?」
耳打ちされたそれはフランシスの何かを大きくえぐった様にも感じられた。
「憎いでしょ?あの子好きだったんだもんね。子供もそっか 死 ん だ ん だ っ け ?」
「・・・。」
早く何処かに言ってほしかった。
フランシスは必死に菊のことを考えた。
今あいつは何を考えながら俺のこと待っているんだろうか?
「可哀想だよね。待ってたのに。」
耳を貸すな。
俺は待ってくれている人が居んだ。
「ねえ。菊もあんなのになるのかな?」
聞くな聞くな聞くな。
笑っていることを考えろ。
笑え俺!
「・・・どうだろうな。」
「ぐちゃぐちゃだったもんね。」
駄目だ!聞くな聞くな聞くな聞くな聞くなk・・・
まるで壊れたロボットのように心の中で叫び続ければ救われると信じた。
だが、そんな意思に反してフランシスの息は次第に荒くなっていた。
「アーサーが憎いでしょ?」
「!!」
フランシスはフェリシアーノの首を握っていた。
それも殺意を込めた握り方で。
このまま力を込めればこんな細い首の一つなど簡単に折れてしまうだろう。
「フ・・・フフ・・・はははは!!!!!!!」
「!!?」
何だ・・・・!?
狂った?いや、それとも・・・。
「兄ちゃん、滑稽だね。力を入れてみなよ。死 ぬ か ら 。」
「!!」
腕は静かにフェリシアーノの首を離れた。
フランシスは体中の力を抜いてフェリシアーノから目をそらした。
それを見てフェリシアーノは満足そうにフランシスの頭を撫でた。
「良い子良い子。ルートヴィッヒが居たらもっと・・・楽しいんだろうな。」
「自愛。」
「あれ~?」
くすんだ金髪。明るい翡翠色の目。印象的な眉毛。
ヒレは美しく腕は長く。
だが、釣り上った目から感じ取れるのは怒りだった。
「アーサーじゃん。どうしたの?こんなことでさ、珍しいね?」
「・・・お前いい加減にしろよ。」
「何を。」
即答だった。
それにアーサーは軽く動じ、フェリシアーノから目をそらした。
フランシスに手を伸ばし身体を起き上がらせる。
だが、その腕をフランシスは拒否した。
「・・・お前に腕借りるぐらいならこの腕切り落としてやる・・・・!!!」
フランシスの光を失った目からあふれ出ているのは大量の涙と憎しみだった。
「にいちゃーん。そんなこと言っちゃ駄目じゃーん。みんな仲良くしてよ~ヴェー。・・・こうすれば愛らしい?王子様。」
「・・・いい加減にしろよ。フェリシアーノ。」
「そっちがいい加減にしなよ。ルートヴィッヒ早く返してよ。」
「・・・あいつは英雄だからな・・・そんな簡単には行かない。」
「フーン。・・・フランシス兄ちゃんも英雄でしょ?」
「・・・忘れられたな。」
「・・・。」
「・・・そうだっけ?俺最近物忘れが酷いんだ。俺の中では英雄なんだよ。」
そう笑っているフェリシアーノに異議を唱える者はいなかった。
「はあ・・・何で湾が真っ青な顔で走って来たと思えばそう言うことあるか。」
「はい・・・恐れ入ります・・・。」
「まあ・・・アイツは何処か・・・思い込みが激しいあるからな。」
「・・・。」
「そんなに気を落とさなくても、アイツはすぐにケロッとするある。心配は皆無ある。」
「・・・だと良いんですけどね・・・。」
「菊。お前最近考え込んでねえ―あるか?」
「え・・・?」
「・・・湾が我に言ってきたある。それも大分悩んでいたある。」
「・・・そう・・・なんですか。」
「・・・お前がなにをしようとしているのか・・は知らないあるが・・・お前もそろそろ湾を嫁に向かいにこいある。」
「んななななN¥・・・!?何を言ってるんですか!!」
「・・・その反応を見たら湾も喜ぶある。」
「・・・無理ですよ。私は定職にも付いてないんですから。」
「お前ぐらい若くて、賢かったらどこでも雇ってくれるある。」
「・・・。」
「言えないわけでもあるあるか?」
「・・・夢の話ですよ。」
「夢・・・?」
「ええ、最近悪夢ばかり見るんですよ。きっと疲れが出たんですね。」
「・・・菊・・。」
「はい。」
「・・・我には何とも言えねえあるが・・・自分が間違っていないと思うなら・・それを信じた方が後で役に立つよろし。」
「・・・はい。」
「お~い。耀!菊!チャオ!俺だよフェリシアーノ!元気だった?」
「お前に会うなんて懐かしいあるな。そう言えば話したことあったあるか?」
「ええ~?あったよ~。俺とルートと一緒にお茶会したじゃ~ん!」
「ああ・・・あの時はアーサーのガキとフランシスのガキも一緒だったあるな。」
「もう~耀から言わせればみんな子供だよ~。ヴェ~」
「そうある。菊もまだまだガキある。おこちゃまある。」
「え~?菊は結構歳くってるってこの間菊が言ってたよね~?あれは嘘なの~?」
「嘘ではありませんよ。もう爺さんです。」
「ヴェ~!?」
「そんな・・え~?みたいに言わないで下さいよ。」
「だって菊はすごくカッコいいのに~。俺信じられないよ~。」
「止めてください。本当に爺さんなんですから。」
「本当にカッコいいのに何で譲歩するの・・・?」
「・・・え・・・。」
「そんなにカッコいいのにさ。何で?俺意味分かんない。」
「・・・フェリシアーノ君・・・?」
「俺が褒めてやってるのにさ?何で素直に答えないの?良いなよ、私は綺麗でしょって。ムカつくよそうやってちやほやされたいんだろう?」
「・・・!!私はそんなつもりは・・・。」
「ふ~ん。じゃあルート・・・勝手に持っていかないよね?俺だけのルートだけだよね?ねえ?約束してよ。」
フェリシアーノは菊の肩を持って力を込めた。
フェリシアーノの爪が菊の肩を引き裂き菊の顔が一瞬苦くなる。
「・・・っ_____________________________。」
「止めるある!フェリシアーノ止めるある!!」
「菊はそうやって何時も守られてるね。昔も今も・・・。俺のは演技だったからねみんな仕方ないって笑ってくれてた。ねえ?菊は?演技なんでしょう?」
「私は・・・。私は演技なんかじゃない。私は自分のできる事は出来るだけ一人の力でやってきました。
勉強だってアルバイトだって・・・・。それに今は小さなことでも将来大きな財産になりうる研究をしています。それを演技などと言ってほしくない!」
「・・・ふ~ん。言うじゃん。俺感心しちゃった。でも・・・最後に笑うのは俺だから。ごめんね。」
「・・・!」
一体何が彼をココまで変えてしまったのだろう。
家族のこと?それとも人間関係?環境?全てだとしたら私は彼にどう接しれば良いのだろうか。
彼の傷は大きくて私一人では抱えきれない。
怖いと思っては相手に悪いと思って、気分でも悪いのだろうと。機嫌が悪いのだろうと。そう解釈してきたが今はどう考えてもそうは思えなかった。
フェリシアーノは何かを求めているのだ。
ただ、それは菊にも分からなった。
フェリシアーノはその後黙ってカフェを出ていった。
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