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人間が嫌いな未成年。 たまに2次創作3次創作を打ちます。 完全オリジナルも打つ時もあります。 このブログを見た貴方と縁があること祈って・・・。
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結構長くなったから半分に分けるよ~。

同じような時間が菊の中で流れていった。
マナー。話し方。気づかい。
それは菊がここまでに経験してきた物ではなく。昔話していた丁寧語と敬語が交じった様な話し方しか知らなかった菊にとって新鮮なものだった。
だが、アーサーとの結婚ということもあって、周りの視線は冷たい。
 
それが出来て当たり前の者を差し置いて菊が妻となることにほとんどの者が反対した。
それでなくても泳げないというレッテルは今までに無いものだったのだから。
だからなのかもしれない、菊の心境は少しずつ変わっていた。
 
フランシスの居ない今。
自分を守る者はこの分厚い窓と扉といつもしかめっ面のルートだ。
さらにたまにしか見ないアーサーに対しての気持ちは菊にとって初めてのものだった。
これを恋心と言うなら菊は神をも怨むだろう。
だが、それ以上に恋心と憎しみに心を燃やす者が菊の身近には居た。
 
 
美しい長い髪と形のよいヒレ
それに長く赤いマントをなびかせて、エルザベータは今日初めて菊の部屋に訪れようとしていた。
 
理由と言えば自分の好きな人が菊の名前を出したことにあった。
それも興味を示しているような口調に会いたいと言う言葉にエリザベータは特に反応していた。
 
嫉妬
 
それがエリザベータの中で渦巻いていた。
元々好きでこの城に来たわけではない。条約だの平和の架け橋だの言っても結局は人質と変わらないのだ。
イタリア王国と戦争が始まれば自分はイギリス王国の人質として殺されるか見せしめにされるかどちらかだ。
 
例え逃げ出したとしても、好きな人に添い遂げたいという願いが日々募っていた。
 
それで、国が滅びようと知ったことではない。
エリザベータは菊の部屋のドアを少々乱暴にノックした。
少し間が開いて「ハイ。」と声が聞こえた。
 
目の前に居たのはほっそりした少女だった。年的に言えば自分より少し年下だろうか。
黒髪に黒い目。くりっとした目に吸い込まれそうになる、どこか神々しい少女だった。
 
「・・・エリザベータ様ですね。私は菊と申します。申し訳ありませんが座ったままでもよろしいですか?泳げないので・・・。」
「菊・・・知ってるわ。ロ―デリヒと言う名の人が貴方の名前を知っていました。何故?」
 
菊はその名前に反応した。
エリザベータがその反応を見逃すわけもなく、菊の肩を乱暴に掴んで暴言を吐いた。
 
「この!!ロ―デリヒさんに何をしたの!!」
「わ・・・私は名前を知っているだけで、何も知りません!」
「嘘を付きなさい!私・・・・私は知っているのよ!!」
 
エリザベータの目からは憎しみと裏切りが見て取れた。
だが、それが一瞬歪みエリザベータが涙を流していることに気がついた。
 
涙が一粒菊の頬をつたった。
エリザベータは泣きじゃくり大声で叫んだ。
 
菊が恐怖で涙していることにも気がつかずに。
 
「あんたなんて、死ねばいいのに!!!消えてしまえば良いのに!!そうすればみんな幸せになれるのに!!!!!」
 
エリザベータはさらに腕を振り上げて菊の頬を打とうと構えた。
ぶたれる。
そう感じたとき不思議と痛みは無く、恐怖の中瞑っていた目をゆっくりあけるとそこにはルートが眉間にしわを寄せながらエリザベータの右手をしっかり握って立っていた。
 
少し間が空いて菊をいつも座っているイスに座らせエリザベータの腕をもう一度しっかり握った。
その時。放心状態だったエリザベータが我に返った。
エリザベータがルートだと言うことに核心したときにエリザベータは菊ではなく、じっと扉を見つめた。
黙っているとカシャンカシャンという重装備の兵士たちがこちらに向かっていることに気がついた。
 
エリザベータはルートにしがみついた。
 
「違います!私は何もしていません・・・!!」
「エリザベータ様。無礼をお許しください。」
「ッひい!!!」
 
ルートの手を弾いてエリザベータは扉に泳いだ。
だが、逃げるには多過ぎる兵士の数にエリザベータは腰を抜かしてしまった。
顔を蒼くして今にも失神してしまいそうなその姿を菊は黙って見ているしかなかった。
 
重装備の兵士たちがエリザベータを持ち上げどこかに連れていく。
ずるずると引っ張って連れていくまではまだ良かったが、途中エリザベータの悲鳴が聞こえ菊はまた震えあがった。
 
ルートが部屋の扉を閉めて菊の顔を覗きこんだ。
赤くなった目をそっと撫でて呟いた。
 
「何もされなかったか?」
 
菊は必死に頷いた。声を出そうにも喉までで声が詰まってしまって出てこなかった。
ルートが今度は菊の顔を持ち上げて目を見た。
 
「本当か?」
 
今度はルートの方を向いて頷いた。
 
「なら良い。今日はアーサー様の許しを得た。海面に出るぞ。」
「はい・・・・・・あ・・・あの・・・・」
「なんだ?」
 
必死に言葉を出そうと喉を鳴らした。
 
「エリザベータ様は・・・どうなるのでしょうか・・・?」
「・・・早く人前に出れるようになって一週間。長くて二週間だな。」
「エリザベータ・・・様は何もされてません。誤解です・・・・だ・・だから・・・・。」
「俺の仕事じゃない。それにエリザベータは約束を破った。」
「約束・・・?」
「・・・菊と言葉を交わしてはいけない。関わってはいけない。それがエリザベータ個人に言われた約束だ。」
「・・・・エリザベータ様はどこに連れていかれたのですか・・・?」
「聞きたいか?」
「・・・・は・・・はい。」
「拷問部屋だ。前にも一度行ったことがある。」
「・・・・・!!あ・・・あの・・・エリザベータ様は・・・。」
「大丈夫だ。奴らはプロだ。俺よりずっと生死について詳しい、殺すことはしないだろう。・・・まあ俺ならば殺すがな。」
 
それはどういう意味で言っているのだろうか・・・。
菊は体の震えを止めようとギュッと体を硬直させた。
 
「菊、今から海面に上がるが、良いか?」
「・・・はい。」
 
息を整えてルートの体にしがみ付いた。
 
海面に近づくたびにエリザベータの事が脳裏をよぎった。
だが、そんなことをお構いなしにルートは上へ上へと昇っていく。
月の光に目がくらみそうになった時、目の前には大きな船がドンと浮かんでいた。
 
菊にとってそれは初めて見るものだった。
賑やかに中は騒ぎ音楽が流れ菊の見たことのない色を発して船を彩っていた。
 
楽しそうだ。
そう思ったのは菊だけでは無かったようでルートも驚いて目を見開いていた。
 
「綺麗ですね。」
 
その言葉にハッとしたのかルートは顔を引き締め騒がしいだけだと呟いたが、その目からは好奇心が感じ取れる。
 
船からは一人つまらなさそうに海をボーっと眺めている青年がいた。
菊はその青年をじっと見た。
脚が生えていてまるでピーターの様だ。髪は金髪で目の色は青だろうか?よく見えないが格好いいということは何となくわかった。
向こうからはこっちは死角になっているので見つかる心配こそなかったが、菊はその青年に興味を持った。
 
自分と年端も変わらない青年。
何がそんなに面白くないのだろうか?話してみたい。駄目なら声だけでも聞いてみたい。
 
だが、それはアーサーとの契約違反なのだろう。
菊はそんな切なさからルートの方を向いた。
 
「彼らに歌を送ってもいいですか?」
「・・・ああ」
 
ルートは女の顔を必死に見ていて、菊の顔も見ずに答えた。
 
「母なる海に帰る我らを人はさげすむ・・・」
 
そう言えばこの歌はずっと昔に作られた歌だそうだ、歌い始めて十数年立っているので歌詞が間違っていると指導係に怒られた。
歌詞の内容的には人魚の人生感が入っているとか歴史だとか、海を裏切った人間を殺めるための歌だとか、本当か嘘かも分からない説があるが、一番の説は海を裏切った人魚のなれ果てた人間の歌らしい。
 
なぜそれが今になって人魚の間に広まったのかは定かではない。
 
ルートはその歌を静かに聞き、落ち着いた声で上手いなと呟いていた。
菊は初めて褒められたように嬉しくなった。
 
声を張り上げ、いつもより丁寧に唄えば中の人間たちは誰が歌っているのだと騒ぎたてた。
それがまた嬉しくなって菊はルートにしがみ付いた。
 
「・・・私の歌は上手かったですか?」
「ああ。」
 
素っ気無い返事だったがそれでも菊にとってこれほど嬉しいこともなかった。
嬉しそうに笑う菊にルートは不器用に頭を撫でた。
 
そのルートの行動に菊は目頭が熱くなった。
初めて愛を受けた気がして涙を流した、ルートは菊の涙を軽く拭って額に唇を軽く当てた。
その行動に菊は驚いたが、これも何かの愛情なのだろうと静かに目をつむった。
 
ルートは愛情か憎しみか分からないこの感情を菊にぶつけたい気持ちになった。
何かを菊にしたら菊は黙ってそれを受け止めてくれるのだろうか、受け止めてくれないのならココで自分を拒否してほしかった。
思いのほか細い首筋に手を伸ばしてルートは菊を見た。
もし自分がココで力を入れれば簡単に菊の首など折れてしまうだろう、だが菊はルートを信じているのか何も言わず黙って体をルートに任せている。
そんな菊の行動がしおらしくて、愛らしくて、静かに目をつむる菊に罪悪感を感じつつ、ルートは自らの意のままに唇に自分の唇を重ねた。
 
「ん・・・。」
 
誰かとめてほしい。
ルートはそう心の中で願った。だが、場所は海面。船からも見えないココで誰が止めに入るのだろうか。
これは自分の我儘だ、気持ちをぶつける相手を間違っている。
そんな思いは簡単に理性の渦に埋もれてしまう。
 
愛している 例えそれが歪んでいる感情であっても
愛している 例えそれが過ちだとしても
愛している 例えそれが破滅の波長だとしても
 
そんな御託を並べてルートは一人納得していた。
自分は菊の事をこれだけ愛しているから、この行動に繋がるのであって、この行動は決して自分の我儘や欲では無いのだ。
 
そう言い聞かせた。
 
まるで自分は関係ないと言いたげな感情に振り回されながらも。
 
その時だった。
冷たい瞳が感情が心をえぐった。
なんだろうか、この予感は。ルートは菊から身を少し離して呟いた。
 
「帰ろう・・・。」
「・・・・はい。」
 
菊は静かにルートにしがみ付いた。
部屋に付いても菊は何一つとして話さなかった。
 
菊をベットに運んでルートは黙って部屋から出た。
 
心を沈め黙って城を徘徊していると城の奥の方からすすり泣く声が聞こえてきてルートは辛くなった。
それがエリザベータのものか、菊のものかは分からないが、それ以上に過ちを行ってしまった自分に後悔していた。
 
「よお、ルートヴィッヒ。菊とのデートはどうだった?」






 
 
「は!!」
 
菊が目覚めたとき。
大量の人魚の資料が消えていた。
それはイヴァンから預かった筈のノートまでもだった。
 
「・・・何故・・・こんなことを・・・。」
 
ピンぽ―ーん。
 
インターホンが鳴り、ドアが大きく叩かれた。
 
「菊!開けて!僕だよ!」
「フェリシアーノ君!?」

ドアを開けてみると青ざめたフェリシアーノが立っていた。

「大変なんだよ~・・・兄ちゃんが・・・兄ちゃんが・・・。」
「何か有ったんですか?」
「家を出ていったんだ。」
「・・・そうですか。」
「ヴぇ!?なんでそんなにあっさり!?」
「さっきロヴィーノ君が来てましたから・・・。」

と言っても今日が何日なのか、時間すら分からないが。

「そ・・・そうなんだ!・・・誰かと一緒だった?」
「アント―ニョさんが一緒でしたよ。」
「そっか・・・ならいいや。」
「・・・。」
「ねえ、菊は前世って信じる?」
「・・・前世ですか・・・?」
「うん前世。俺は信じてるんだ。」
「・・・私は・・・信じてないです。」

そう言った菊にフェリシアーノは何かを手渡した。

「これ、アーサーが持ってたんだ。」
「真珠ですか・・・?」
「うん、綺麗でしょ?」
「ええ、本当に。」

その瞬間目の前が歪んだ様な気がした。
そして体の力が抜けるように座り込んだ。

「っヴぇ!?どうしたの!?きく!」
「・・・。」

完全に菊はそこで倒れ、意識が飛んだ。

目が覚めるとそこにはイヴァンが心配そうに菊を見ていた。

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