人間が嫌いな未成年。
たまに2次創作3次創作を打ちます。
完全オリジナルも打つ時もあります。
このブログを見た貴方と縁があること祈って・・・。
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束縛は嫌いではなかった。
でも束縛されるのは嫌だった。
「は・・・は・・・」
城を出たルートヴィッヒは息を切らしながら海底へと進んでいた。
噂で聞いたことのある、海底で唄う人魚に合う為だった。
唄っていると言うことは生活が有ると言うことだ。
そして自分が根も葉もないうわさを信じているなんて嘘のようだった。
何か惹かれるものが有るのかもしれない、そこに誰かいると信じてルートヴィッヒは海底へと潜っていった。
「はあ・・・はあ・・・。」
次第に空気が薄くなりスピードを出して泳いだルートヴィッヒにはもう限界だった。
すると見たことのない青白い光に目が反応した。
美しかった。
何が光っているのだろうか?さっきまでの疲れなど忘れてしまったようにルートヴィッヒはそこに向かった。
「・・・。」
洞窟だった。
中からは食事の匂いと暖かな光が見えた。
何かの罠だろうか?それとも神の思し召しだろうか?
「・・・?兄ちゃん?」
中に人が居るらしい。
一般人だろうか?それとも囚人?いや、もしかしたら何かの為に隠れているのかもしれない。
「だれだ。」
ルートヴィッヒはどすの利いた声で彼に話しかけた。
洞窟の周りがうっすらと光っているがそれでも相手の顔までは見えなかった。
「僕だよ。」
「だから誰だ!」
「ルートヴィッヒ。フェリシアーノだよ?」
フェリシアーノは静かにルートヴィッヒに近づきあいさつのキスを数回繰り返した後、
ルートヴィッヒに思いっきり抱きついた。
「ルッツ!!ルッツ!!」
「・・・」
「お兄さん達邪魔しちゃった?」
「貴様ら誰だ!!場合によっては・・・!!」
「あれ?お兄さん知らない?昔は戦場の薔薇って言われてたんだけどな~」
おどけた話し方にルートヴィッヒは肩に力を入れた。
そうだ、何故今まで気がつかなかったんだろうか?
「・・・お前が・・・戦場の薔薇と謳われたフランシス=ボヌフォアだと・・・?」
「まあな。」
「フン、今は光を失い戦場から姿を消した愚か者だと聞いている。」
「それはお前らがそうさせたんだよ。俺は雇われてたからな。」
「あ・・・。」
菊が震えた声を出した、それにフランシスも反応する。
だがそれ以上に反応したのはルートヴィッヒだった。目には恐怖を宿し声もどこか震えていた。
それを見てアーサーは笑った。どこに行ってたんだよと付けくわえて。
誰でも無い自分が一番知っているだろうその答えにルートヴィッヒは魔法にでもかけられたように動けなくなっていた。
「アーサー様・・・!!」
アーサーの後ろで控えていた騎士が声をあげた。
その声にはどこか上ずって居るものを感じた。
「なんだ?」
「ルートヴィッヒの処罰はいかがなさいましょうか?それと逃亡者フランシス=ボヌフォアについてもですが・・・」
「ああ、それ相当の処罰を与えなければ民に示しがつかないからな。」
「は!!」
騎士に無理やり掴まれて菊は投げ出されてしまった。
痛みに声をあげる菊にフランシスは声をあげた。
「菊!!大丈夫か!?お兄さんが今抱きかかえてやるからな!!」
「ほ~。この女泳げないのか?よく今まで生きていたな。」
アーサーが面白がって菊の顎を持ち上げた。
このあたりでは珍しい黒髪にアーサーは興味シンシンだ。
「面白いな、黒い髪に黒い目。貧相な身体だが・・・。」
アーサーが乱暴に菊を抱きかかえた。
いきなり抱きかかえられたものの、フランシスの事が気になって仕方がなかった。
「悪くない。」
「フランシスさんをどうするのですか?彼は何も悪いことをしていません、私の為にココまで連れてきてくださっただけです!」
「ココに連れてきて何をする気だったんだ?フランシスさん。」
「・・・お前には関係ないだろう。俺を連れていくんだろ?行けよ。」
フランシスの毒っけのある言葉にアーサーは眉をひそめた。
兵士たちはフランシスの首元に剣のようなものをあてた、フランシスは見えないって得だと笑って言う。
「この女が余程大事なんだな。」
「それがどうしたんだ?アーサー殿。」
またアーサーは笑った。
今度は好奇心と悪戯心を秘めた少年の顔だった。
だが、それに違和感を覚えたのはフランシスだけではなくルートヴィッヒはカタカタと歯を鳴らして震えていた。
「菊だったかな?」
「・・・はい。」
アーサーは黙って菊を見た。菊は怖がってアーサーを直視できないで居た。
「俺はアーサー。折り入って相談が有る。フランシスを牢屋や拷問部屋に送るのはとても簡単なんだ。」
「!!そんな・・・!!」
それに反応した菊を止めるようにアーサーが話しかけた。
「落ち着いてくれ、そこでだ、菊が俺のところに来るならフランシスは見逃してやってもいい。どうせ目も見えない役立たずになり下がっちまったんだからな、戦場の薔薇なんて良く言ったのもだ。それに牢屋に入ったところで何年後に出てくるやら?」
「・・・・っ!」
フランシスが苦虫を潰されたように顔を濁す。
「だが、菊が俺のところに来るのなら話は別だ。」
「え・・・?」
「食事も寝るところもコイツより良い物を揃えてやる、どうだ?くるか?」
卑怯な提案だった。
そんなの私が言える答えは一つしかない。
「は・・・い。」
「イヴァン君・・・この駅じゃないでしょう?」
「うん、菊君にどうしても渡したいものが有ってね。」
イヴァンが鞄から出したのは何かのレポートと書かれたノートだった。
「これは・・・?」
「・・・日本語の練習ノート。」
「ああ、そう言うことですか。きちんと確認しておきますね。」
「嘘だよ。」
「え・・・。」
「人魚姫。君が調べてるって知ったんだ。だから僕の記憶を書いておいたんだ。」
「き・・・・おく・・・。」
「君も覚えているんだろう?僕もね少しだけ覚えてるんだ、少し嫌になる時も有るけどね。」
「・・・受け取れませんよ・・。」
「・・・何で?迷惑だった?」
「違うんです・・・私は・・・私は・・・怖いんです。」
「・・・?何が?真実を知ることが?それとも現実が怖いの?」
「・・・どちらもですよ。私はまだ全てを思い出せていないんです。だから手探りで調べています。だけど・・・。知れば知るほど怖くなるんです。」
「・・・確かに嫌な記憶が多いけど・・・でも、今の君とは関係ないじゃない。」
「・・・それが・・・かなり関係有るんですよ。」
「どういうこと?」
「・・・。同じ事が起こって居る様な気がするんです。」
「・・・今人魚なんて居ないよ、それは僕が一番知ってるもの。」
「でも、私は感じるんです。海底の奥底で今でも唄っている私が私を見ているような・・・・!!」
「大丈夫だよ。例えそうであっても関係ないでしょう?」
「・・・、独りなんですよ。暗くて狭くて息苦しいんです。私が助けなくちゃいけないんです。」
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