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人間が嫌いな未成年。 たまに2次創作3次創作を打ちます。 完全オリジナルも打つ時もあります。 このブログを見た貴方と縁があること祈って・・・。
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数年ぶりに見たのは広大過ぎる空と

あまりに小さな自分の存在でした。

人魚姫8 
 
「菊。」
 
そういうとルートはなれない手つきで菊を持ち上げた。
元々女性とは接点が少なかったのだろうか、その口元は微かに震えている。
 
「・・・。ルートヴィッヒさん、緊張なさらなくても大丈夫ですよ・・・?」
「・・ちょ・・ちょっと黙っててくれ。・・・ど・・・どう持てばいいんだ・・・・。」
 
これでいいのか?と手を持ちかえたり腕や手が胸などにあったっていないか確認したりと、
大分緊張しているようだった。
 
その姿を見て、改めてフランシスが女性になれていると再確認した。
海底で身を沈められていた菊を躊躇なく家に持ち帰ったのだから、最初は大富豪か何かと思ったが。
今思えば女性の扱いに長けているからできたことなのだ。
 
「きょ・・・今日はアーサー様からの許しを得て海面に上がることになっている・・・。」
「・・・アーサー様は私に何を求めているのでしょうか・・・。」
 
その言葉にルートは目を細め冷たく言い捨てた。
 
「何も求めなどいない。」
 
菊は機嫌を損なってしまったのだろうかと、焦り、言葉を探した。
だが、簡単に言葉が見つかる筈もなく、菊が発したのは一言だった。
 
「・・ごめんなさい。」
 
ルートは菊を見て誤らなくてもいいと一言いうだけで、すぐにそっぽを向いて城を出た。
 
ぐんぐんと進むルートに必死に菊はしがみついた。
ルートは指令に対して遂行しようと思っているだけらしく、菊に全くと言っていい程気を使わなかった。
だが、逆に菊にとってそれはまるで認められたようにも感じられて、気が楽だった。
気を使って貰えば確かに気分は良いが、息を詰まるような想いすら感じていたからだった、
城の中で気を使わずに済むのは、ヨンスとメイドのリヒテンとセーシェルくらいだ。
 
周りの景色がどんどん明るくなるのを菊はうきうきしながら見た。
菊にとって数十年ぶりの景色だったからだ、幼いころに両親に連れていってもらった海面。
それはもう叶わない願いになってしまったが、今こうしてルートと共にまたあの景色が見れると思うと城の中での憂鬱など晴れてしまっていた。
 
アーサー心遣いに感謝しながら海面に近づいた。
 
もう手を伸ばせば海上だというときルートはスピードを落とし、菊に注意した。
 
「海上の暮らしは俺たちと全く違うとアーサー様が言っていた。そして、決して人に見られてはいけない。」
「何故ですか?」
 
素直に不思議と思った菊がそう聞くと、ルートは言葉に詰まらせた。
ルートは眉を吊り上げて菊を睨んだ。
 
「・・・兎に角、アーサー様が言っておられるんだ。」
 
あまり追及してはいけないのだろうと、菊は息を飲んだ。
 
「・・・はい。」
 
だが、意味が分からなかった。
何故人に見られてはいけないのだろうか、何か問題でもあるのだろうか。
それは私が泳げないからだろうか、それとも醜いこの体を恥じろということなのだろうか。
菊はむき出しになっているあばらを軽く撫でた。
 
そんなに酷いだろうか。
 
ルートはまず自分が海面に顔を出して安全の確認をした後、菊をそっと自分と同じ位置に連れてきた。
菊が勢いよく肺に呼吸を吸い込んで肺呼吸を始めた。
 
息を荒立てながら次第にゆっくりと呼吸をしていく、肺に呼吸が隅々までわたると、さっきまで苦しそうだったの顔もすっきりしていた。
 
「上手く肺呼吸出来たか?」
「・・・はい。」
 
涼しげにいうルートに遺憾を覚えたが、ぐっと堪えた。
言ってくれれば良いのに。
 
「悪いな、肺呼吸の事は言ってはいけない人魚の中でも禁則事項なんだ。」
「どういうことですか?」
「安易に海面に姿を現わせばアーサー様が困るからだ。知っているものはほとんどいない。」
「何故ですか?」
「お前は質問が多いな、・・・人魚の平均寿命は30にも満たない事は知っているだろう?」
 
そう言われるとお歳を召した方を見かけてなかった。
成程そういう理由があったのかと、菊は納得したように息をもらした。
 
「もしかして、知らなかったのか。」
「はい・・・お恥ずかしいですが。」
 
そうか・・・とやはり呆れ顔でルートは空を眺めた。
 
空は深い青で覆われていて、ところどころ黄色や白。時々赤く色づき光る輝く物をじっと菊は見た。
あれは一体何なのだろうか。
 
「ルートヴィッヒさん。あれはなんですか?」
「・・・なんだ?あれは・・・魂だと誰かが言っていた。」
「魂・・・。」
「ああ、何時だったか眠れない夜に言っていたんだ。あれは生きているものたちの生きている証なんだと。誰もが持っている星だ。俺や菊のものもある。星が弱弱しく光って居ればそれは体が弱っている証拠だ。凛々と光って居れば元気。分かりやすいだろう?」
「はい。あの星は何方のものでしょうか?」
「どれだ?」
 
菊は光り輝く星の下にある小さく黄色に輝いている星に指を向けた。
 
「・・・光り輝いているのは知っている。あれは・・・。・・・下の小さな星は菊かもしれないな。」
 
それを聞いて嬉しそうに菊は笑った。
 
「良かった。私は無いのかと思ってました。」
 
表情とは裏腹に寂しげな事をいう菊を見てルートは卑屈。とか弱虫とか思っていたが、
今そう言う考え方は違うのだと思い知らされた。
彼女はあまりに控えめなのだ、自分を諸にだす女性たちとは違う菊の態度は珍しい以上に新鮮だった。
 
「今度はアーサー様もおよびしましょうね。」
「・・・アーサー様はお忙しい。次機会があるとすればまた俺とだ。嫌なら嫌と言えば良い。」
 
その言葉に菊は驚いているようだった。
 
「何故私がルートヴィッヒさんを嫌だと思われるのですか?」
「何故って・・・俺と見に来ても楽しくないだろう。」
「・・・・・確かにいつも良くしてくれる人たちとはまた違います。ですが、ルートヴィッヒさんは私に良くしてくれるじゃないですか。」
「どういうことだ・・・?」
 
菊は少し考えて苦笑した。
 
「みなさん私のことをアーサー様のオマケの様に見られるんです。私は綺麗でも気品がある訳でもありませんし、頭が良いわけでも無いですから。」
「・・。」
「でも、ルートヴィッヒさんは私のことおまけのように見ないでしょう?」
「・・・仮にも同じ部屋に居るからな。」
 
その返答に菊は軽く微笑んだ。
 
「それだけで気が楽なんです。」
 
ただ、普通に見られたかった。
泳げるとか、人魚じゃないだとか、そんなの関係なしに私を見てほしかった。
 
普通にお喋りをして。
普通に笑って。
普通に涙を流して。
普通に弱音を吐いて。
普通に幸せだと感じていたかった。
 
だけど私のこの身体ではその願いはかなわない戯言なんだろう。
 
海上に続く空はあまりに広かった。
大きく光り輝く星はまた燃えるように赤く光り輝いた。
 
その下の星は変わらず小さく儚く光っていた。
 
 
 

 
 
 
 
菊が目を覚ました時初めて自分が眠っていたことに気がついた。
イヴァンから預かったノートに薄く消えかけた文字を(多分一度消した文字)読みとろうと必死になって気がつけば寝てしまっていたのだろう。
記憶が曖昧で机の上の物を軽く片付けると、菊は答えを出した紙を見つけた。
 
“聖職”
“人魚”
“ロ―デリヒ”
 
読みとれた単語は以上だった。
人魚は兎も角聖職とは何のことだろうか?
普通に考えれば教師?いや、医者という線もありうる。
 
そうして考えてみると聖職と呼ばれる仕事は数多くあるものだと改めて感じてしまった。
 
「・・・まあ、この時代ですからね。医者でしょうか?」
「何一人でブツブツ言ってんの?変やで?」
 
その言葉に背筋がぞわりとする。
何も後ろめたいことはしていない筈なのに、なぜか息苦しい。
 
それもその筈だった。
さっきから頸動脈を絞められているのだから。
 
「死ぬしにゅ・・・・・・・・・。」
「大丈夫やで、俺ちゃんと加減してるから。多分後23秒で落ちるけど言い残すことある?」
「落と・・・・さない・・・・・でください・・・・・・・・・グえ・・・・・。」
「あ・・・落ちたわ。ロヴィーノ!来ても平気やで~!」
「このヤロー!姿みられてどうすんだよ!警察に届けられたらどうすんだよ!」
「大丈夫やで、俺菊と友達やから!」
「そういう問題じゃねーんだよ!!」
「ま、仮に届けたとしてもこっちがシラ切れば案外いけるで。」
「なんでだよ。」
「菊は変わり者って近所じゃ有名やからな~。」

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