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歯車は揃ってしまった。後は終焉までの時を鳴らすのみ。
全てが夢なら誰も後悔せずに終わるというのに。
人魚姫 本編6
私は一体どうどうすればいいのだろうか、確かに覚悟はしていたがまさかここまでとは思っていなかった。
「フランシスさん・・・。」
その時だった、一人の青年が部屋の中に入って来た。
15~16歳だろうか?黒髪に髪の毛がぴょんと飛び出ているが、カッコいいの部類に入ると思う。
「俺は、ヨンスなんだぜ。・・・お前は菊か?」
「ええ・・・私は菊です。」
「部屋に案内するからこっちに来るんだぜ。」
そう言ってさっさと歩いてしまうヨンスを菊は遠くからベットに座ったまま見ていた。
するとヨンスいきなり戻って来た。どうやら怒っているらしい。
「お前!俺の後ろに付いて来いって言ったんだぜ!?」
「!すいません、私歩けないもので・・・!」
怖かった。何をされるか分からないこの城で怒られるのは。
「・・・歩けないのか?背負ってやるから腕を貸すんだぜ。」
「は・・・はい。」
だが、意外にヨンスは良い奴で菊の心境を分かっているのか黙って菊を背負ってくれた。
ヨンスが誰もいない事を確認した後菊に尋ねた。
「お前は何でココに来たんだぜ?」
「・・・。」
菊は黙ってしまった。何と言ったらいいか分からないだけではなく、言葉で帰りたいと言っただけで何をされるか分かったものじゃない。
「・・・言いたくないんだぜ?」
「・・・と言うよりは言えないです。」
言ったら最後弱音を吐いてしまいそうだった。さっきから肩が震えて声も若干震えている気がする。
ヨンスは少し黙って口を開いた。
「俺が言ったことは全部嘘だから聞き流してもいいんだぜ。」
「え・・・?」
「俺はこの国をなんとかしたいと思ってるんだぜ、でも普通のやり方じゃそれは叶わないんだぜ。劇薬じゃないと・・・。」
菊は息を飲んだ。
ヨンスはまた黙って菊の部屋まで泳いでくれた。
何人かが菊の方を見ていたが、誰も何も言わずに仕事にさっさと戻っていった。
その視線の一つ一つに威圧感を感じて菊は恐ろしくてまた震えあがってしまった。
その度にヨンスは菊を落ち着かせようと何か話したりした。
尤もほとんどヨンスが独り話している状態で菊は聞き手だった。
「この城は元々ゲルと言う人が建てた城で、今のアーサー王のひいひいおじい様にあたるんだぜ・・・っとココが菊の住む場所だぜ。」
その部屋は豪華だった。
部屋に入った途端に目の前にはサンゴの置物や、真珠。それに煌びやかな宝石。
ヨンスは菊をベットまで運ぶと何か持ってくると言って部屋を出ていってしまった。
菊は近くにあったドアに目をやった。そこには今まで居た海が広がっていたが、その光景は決して美しいものではなく憎しいものだった。
そして舞台は変わってココはフェリシアーノの城の会議室。会議室の中では何やら討論が繰り広げられていた。
「そんなのには反対だぜえ!?それじゃまだ正面突破したほうがマシだ!!」
それに猛反対しているのは普段から仮面を装備しているサディクだ。
だが、それに対して不満そうにヘラクレスは声をあげた。
「煩い。・・・俺は賛成だ。・・・正面から行っても・・・負けは確定して・・・いる。」
「俺の意見が聞けないっていうのサディクは?ヘラクレスは何か考えはある?」
その問いにヘラクレスは癖っ毛の多い髪をいじった後声に出した。
「・・・誰かが、行くならアーサーの・・・国の奴がいい。」
「なんでだ?フェリシアーノは隙を狙ってやるって言ってたが・・・。」
「・・・同じ・・仲間が攻撃してくるとは・・・考えにくい・・・それで奇襲を・・・すれば・・・」
「そんな卑怯な真似をしろってか!?俺は反対でぇ!」
フェリシアーノは黙ってロヴィーノに目をやった。ロヴィーノはその目線に気が付いてみんなを黙らせた。
「ヘラクレスの作戦で行こう。かなり無茶な作戦だし、丁度良い人を探さないとね。」
「フェリシアーノそれは俺が手配しておく。お前は早く寝た方がいい、サディクお前はこのことをエ―デルシュタイン卿に話しておいてくれ、もしかしたら手を貸してくれるかもしれない。ヘラクレスお前は俺と一緒に手伝ってくれ。」
ヘラクレスがサディクをちらっと見た後
「・・・サディクだけじゃ・・・頼りない。俺もサディクに着く。」
「分かった。フェリシアーノは寝てていいからな。」
そう言うロヴィーノは何時もより兄貴ぶっていた。だが、そのお陰でフェリシアーノは気が楽になった。
「ヴぇ・・・。兄ちゃんじゃあ俺もう寝るね。」
「おう、後は俺に任せておけよ。」
そう言い残してフェリシアーノは会議室をでた。
中では誰に依頼を頼むか相談中だ。
フェリシアーノはドアの前で立ち止まってぼそりと呟いた。
「ありがとう兄ちゃん。アント―ニョの兄ちゃんは俺が生き返らせてあげるからね。」
フェリシアーノは笑った。それは兄に対する感謝の意でも無く、仲間たちが自分の為に動いてくれているわけでも無かった。
ただ、喜びよりは勝利に満ちた笑みだった。
「わすれた?君がかい?」
「ええ、さて、さっさと餃子を作りませんとすぐに夜になってしまいますよ。」
そう言うとアルフレッドは菊の持っていた荷物も持って菊より先に走っていってしまった。
菊はその後ろ姿を見て微笑んだ。だが、鞄に入れたノートを握り締めている手は汗ばんでいた。
アルフレッドは合鍵を持っていた筈だ。ならば多少遅れても問題は無いだろう。
「・・・これがイヴァンさんの過去。」
菊はノートを開いた。
そこには達筆な字で書かれたイヴァンの文字が英語で綴られていた。
「・・・英語ですか。日本語練習ノートって言ってたのに。」
そのあとにすぐに嘘だと言われていたのを思い出した。
菊は人よりも文字を読むの早い。それは勉強の賜物であるのと同時に生まれ持った天賦の才能でもあった。
ノート全て読むのに約5分消費したが、それより菊の目は真っ赤で涙がぽろぽろと流れていた。
「イヴァンさん。これが本当だとしたら・・・貴方が私にこれを見せるのに抵抗を感じたでしょうね。」
good lack! kiku.
「こんな結末は哀し過ぎます・・・。」
A friend in need is a friend indeed.
「もう・・・誰に頼ったら良いんですか・・・。」
その時だった。
後ろから何者かが菊の身体を抱きしめた。
「ッワ!どうだい驚いたかい?」
菊の顔を覗き込むとその目が真っ赤な事に気がついた。
「菊?何で泣いているんだい?」
「・・・何でもありませんよ。・・・早く作りましょう。」
「あ・・・そうだね・・・。」
アルフレッドは少し考えた後声に出した。
「俺は菊の事覚えているんだぞ。」
「え・・・。」
「女の子で人魚だった君を知っているって言ってるんだよ!」
「・・・嘘でしょう?」
「嘘じゃないんだぞ!だから、俺は菊の事を好きだと思うし、これからも親友で居てほしいって思うんだぞ!」
「・・・アルフレッド君。」